o-enzyme

結婚・出産・復職を経て考えること

子どもの歯にフッ素を塗るかどうか迷ったときに調べたのは、自治体の水質検査結果

歯科などで、子どもの歯にフッ素を塗るよう勧められて、塗るべきかどうか悩んだことはありませんか? フッ素を塗るときは、居住地域の水道水に含まれるフッ素量を事前に調べておくとよいようです。

フッ化物とは?

日常的には「歯にフッ素を塗る」と表現することが多いかもしれませんが、実際に、歯科などで歯に塗るよう勧められるのは「フッ化ナトリウム」という「フッ化物」です1)

飲み水にフッ化物が豊富に含まれている火山地帯では、むし歯がほとんど見られないそうですが2)、フッ化物はむし歯を予防するために広く利用されています。

 

どのようにフッ化物をむし歯予防に応用するか

フッ化物のむし歯予防への応用法としては、局所的に利用する方法と、全身に利用する方法の2つがあります3)

歯科で歯に塗ってもらう方法は、局所的な利用方法の一つです。ほかにも、フッ化物を含む溶液でブクブクとうがいをしたり(フッ化物洗口)4)、フッ化物を配合している歯磨剤を使ったりする方法があります。

全身に利用する方法としては、「飲料水中のフッ化物濃度をむし歯予防に適した量に調整する(水道水フロリデーション5))」、「食品へフッ化物を添加する」、「フッ化物錠剤や液剤を用いる」といった方法がありますが、日本では今のところ行われていません。

 

大量のフッ化物を一度に摂取しないように注意が必要

子どもの歯をむし歯から守ってあげたいと強く思う一方で、フッ化物の毒性は気になります。一時的、あるいは、長期的に、過量のフッ化物を摂取したときに生じる、急性中毒や慢性中毒の問題があるからです。

急性中毒では、例えば、体重12kg程度の3歳の子どもであれば、フッ化物歯面塗布製剤1回分の上限量2mL(gr)の4人分を一度に摂取した場合に推定中毒量に達するとされています3)

「4人分のフッ化物剤を一度に摂取する」状況は通常ではありえないので、事故などが起きない限り、歯科で塗布してもらう分には問題はなさそうです。ただ、家庭では、フッ化物配合の歯磨き粉を大量に誤飲するようなことが絶対に起きないよう注意する必要はあるかもしれません。

 

長期的なフッ化物の過剰摂取にも注意する

 長期にわたってフッ化物を過量に摂取した場合には、慢性中毒症として、歯のフッ素症や骨フッ素症が生じることがあります7)

歯のフッ素症では、8歳までの子どもが、0.1mg/kg体重のフッ化物を毎日摂取すると、中等度の症状(歯の表面が全体的にチョークのように白く濁る)が現れる可能性があるとされています。

一方、骨フッ素症では、症状が進行すると、運動障害性フッ素症という四肢麻痺が進行する状態になることがあるようです。しかし、そのような状態になるのは、少なくとも10年以上、10~20ppmのフッ化物を含む飲料水を毎日摂取している場合と推定されています。 

長期的な視点で、フッ化物の過剰摂取を防ぐためには、まず、飲料水や、使用している歯磨き粉・ガムなどから、どのくらいのフッ化物を摂取しているのか把握する必要がありそうです。

 

フッ化物を子どもの歯に塗るよう勧められたら

私たちの家庭では、子どもには、フッ化物入りの歯磨き粉やガム等は与えていないので、子どもがフッ化物を摂取する経路は、基本的には飲料水のみと考えられます。

一方、水道水中に0.7ppm(mg/L)以上のフッ素が含まれている場合には、錠剤などからのフッ化物摂取を避ける必要があるとされています8)。水道法第4条に基づき定められている、フッ素およびその化合物の水質基準値が0.8mg/Lであることをふまえると9)、たとえ水質基準的には問題がなくても、「フッ素およびその化合物が多く含まれている水道水を飲んでいるために、水道水以外からのフッ化物摂取は避けたほうがよい」と判断される状況は起こり得そうです。

これらのことから、水道水以外からのフッ化物摂取を許容するかどうか(歯科でフッ化物を塗布してもらうかどうか)判断するためには、実際に飲んでいる水道水中にどの程度のフッ素が含まれているかを事前に知る必要があると思いました。私たちの家庭では、市販のミネラルウォーターなどではなく、水道水を煮沸して飲んでいるため、なおさらです。

自治体の水質検査結果から、水道水中のフッ素量を確認したところ、水道水中のフッ素およびその化合物の含有量は0.11〜0.14mg/Lであることがわかりました。調べる前は、万が一、水質基準値ぎりぎりだったら、歯科でのフッ化物塗布はやめようと思っていましたが、そうではなかったので、その後は、歯科でのフッ化物の塗布をお願いする方針にしています。

 

日本小児歯科学会では、フッ化物を歯科で正しく使用する分には急性中毒や慢性中毒は問題ないとする提言を発表していますし3)、今後も、子どもに関しては、歯科でフッ化物を塗ってもらおうと考えています。

 

 

1)フッ化物(ふっかぶつ), e-ヘルスネット(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

2)ミヒャエラ・グレックラー (著),ヴォルフガング・ゲーベル (著),入間 カイ (訳),〈小児科診察室〉研究会 (監修), 小児科診察室 シュタイナー教育・医学からの子育て読本 増補改訂版, p209-212

3)学会からの提言 > フッ化物の局所応用についての考え方(一般社団法人日本小児歯科学会)(2018年6月7日アクセス)

4)フッ化物洗口, e-ヘルスネット(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

5)水道水フロリデーション, e-ヘルスネット(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

6)フッ化物の急性中毒量(ふっかぶつのきゅうせいちゅうどくりょう), e-ヘルスネット(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

7)フッ素症(ふっそしょう), e-ヘルスネット(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

8)松田道雄著, 定本 育児の百科(下)第10刷, p134-136

9)水質基準項目と基準値(51項目)(厚生労働省)(2018年6月7日アクセス)

 

o-enzyme.hatenablog.jp

o-enzyme.hatenablog.jp

o-enzyme.hatenablog.jp